【連載:スペース・リーダーの現在地(中篇)】「ほぼ廃墟」の物件も生まれ変わらせるプロの仕事

2026年8月28日

スペース・リーダーの連載記事、第2回です。前篇では当社の根幹にある哲学をお伝えしましたが、私たちの仕事はゼロから新しいものを創るだけではありません。既存の建物の価値を見出し、再生させるコンサルティングも重要なミッションです。今回は、管理部門を担当する木村を交え、私たちが直面した「最も難易度が高かったプロジェクト」の裏側と、泥臭い現場のリアルに迫ります。


広報: 当社では自社開発の『BASE』シリーズだけでなく、コンサルティング的な業務も増えていますよね。木村さん、近年に手がけた中で、特に印象に残っている難易度の高かったプロジェクトについて教えてください。

木村: 強く印象に残っているのは、神戸にある物件ですね。当社の創業者時代から長年お付き合いのあるオーナー様からのご相談でした。かなり古い建物で、長年入っていたテナントさんが退去されることになり、「さあ、建物も老朽化しているし、これからどうしようか」と。 私たちとしては、管理会社の視点から「オーナー様にとって何がベストか」という想いと、「不動産のプロとしての客観的な見立て」の両面から、今後の提案方針を慎重に検討し始めました。

「思い入れのある建物だから、どうにか残したい」という想いに応えた神戸の物件は印象に残っています(木村)
「思い入れのある建物だから、どうにか残したい」という想いに応えた神戸の物件は印象に残っています(木村)

広報: 当時の状況について、三谷さんも野添社長もかなり頭を悩ませていたと記憶しています。

三谷: あの物件の初期状態は、本当にすごかったんですよ。大げさではなく、まるで映画のセットに出てくる「廃墟」のような状態でしたから。長年の使用で壁は穴だらけ、配管のパイプなんかがそこら中に転がっていて……。率直に言って、そのまま貸し出せるような状態ではありませんでした。だからこそ、最初は「新しく建て替えるか、いっそ取り壊して更地にして売却した方が良いのではないか」という方針をご提案したんです。

野添: 私も現地を見ましたが、「これは本当なら取り壊した方が早いくらいの物件だ」と思いました。私は仕事において、めったなことではネガティブにならない性格なんですが、あの時ばかりは「これ、いくらお金をかけて改修工事をしたところで、本当に次の借主がつくのか?」と本気で心配になったほどです。

広報: プロの目から見てもそれほど厳しい状態だったのですね。それでも、最終的には「既存の建物を活かして改修し、当社でサブリース(一括借り上げ)する」という決断に至りました。その決め手は何だったのでしょうか。

木村: 建築費が高騰しているという社会背景もありましたが、何よりオーナー様ご自身の中に「この建物には思い入れがあるから、なんとか残したい」という強いご意向があったんです。私たちはその想いを最大限に尊重し、なんとか今の建物を活かす形で改修して、当社でサブリースする道を選びました。

三谷: もちろん、無策でサブリースを引き受けたわけではありません。周辺の市場を徹底的に調査しました。すると、競合となるような同規模・同条件の物件が意外と少ないことがわかったんです。「これなら、的確な改修を入れて価格設定さえ間違えなければいける。なんとかなるだろう」と判断しました。結果的に、上場企業様が借りてくださることになり、建物の内部も借主様の手でさらに改修工事を入れて綺麗に使っていただける予定です。

周辺の情報をリサーチし、「何とかなるだろう」という手応えはありました(三谷)
周辺の情報をリサーチし、「何とかなるだろう」という手応えはありました(三谷)

野添: この物件に限った話ではありませんが、不動産の仕事をしていると、しんどい思いや大きな不安を抱えるプロジェクトに直面することは多々あります。でも、そうやって逃げずに真摯に関わり続けることで、確実に次の仕事へと繋がっていくんです。長年のお付き合いの中で、オーナー様の跡継ぎの方と新たな信頼関係が生まれることもありますからね。

広報: 管理部門の木村さんとしては、オーナー様やテナント様と日常的に接する中で、どのような関係性を意識していますか?

木村: やはり「長くお付き合いをしていくこと」ですね。何年も関わっていくうちに、単なる管理業務の枠を超えて、全く新たなご相談をぽろっといただいたりするんです。オーナー様からも、入居されているテナント様からも、困りごとがあれば「とりあえずスペース・リーダーの木村さんに相談してみよう」と思っていただける。そうやって丸ごと相談を受けて「わかりました、なんとかします」と奔走するのが、私たちの腕の見せ所だと思っています。

広報: そうした困難な案件や、幅広い相談を乗り越える上で、同業者とのネットワークも当社の大きな強みですよね。

三谷: 非常に重要です。ありがたいことに、色々な同業者さんから「ぜひ情報交換させてほしい」とお声がけいただくことが多いのですが、お付き合いする相手はしっかりと見極めています。その人が「自分の利益だけを追求する利己的な考え方か」、それとも「周りにちゃんと情報や価値を施せるタイプか」という点ですね。 困っているオーナー様を発掘して最適な提案ができるのも、そうした「気概のある同業者」との繋がりがあってこそです。「こういうことで困っているオーナー様がいらっしゃるんですが……」という相談は、信頼関係のあるネットワークからしか生まれません。これからも、どんどん成長していこうという意気込みのある業者さんとお付き合いし、自然と気の合うネットワークが強化されていくのが理想的な流れですね。


決して逃げず、オーナー様の想いに寄り添い続ける現場のリアル。それがスペース・リーダーの真の強みです。最終回となる【後篇】では、昨今の業界の変化の中で当社が果たすべき「コンサルティングの真髄」と、2028年の分社化、そして2029年の創業30周年に向けた未来のビジョンについて、再び野添社長と三谷役員・木村役員に語ってもらいます。